『ラストナイト・イン・ソーホー』

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面白いとは思っていたんですが、やっぱり面白かったですね。

なんかエドガー・ライトって何でもできるから羨ましいです。

器用すぎるんだもんこの人。才能しかない人。

ゾンビ物、刑事バディ物、宇宙人侵略物、カーアクション物と定番のジャンルエンタメに次々と取り組んでは、映画愛と先人に敬意込めつつ、イギリス人気質な笑いのセンスと確かな面白映画作りの能力発揮の才人。

面白すぎて信じられなかった『ベイビー・ドライバー』で、ついにアメリカに殴り込みかけて最高傑作ブチかましを悠々とこなして、もはや描けないジャンルなんぞないんだよという自負と余裕さえ感じさせる新作は、颯爽と帰還しての堂々イギリス映画。

ファッションの専門学校に通うためにロンドンはソーホーに向かった服飾デザイナー夢見るレトロ趣味で、霊感も強い田舎女子が、独り暮らし始めたアパートで眠りに落ちた途端に60年代にぶっとんでいき、そこで出会った歌手を目指す若い美女と精神も肉体もつながってしまい、いつしか夢と希望は悪夢と絶望に変貌し、血と欲望にまみれた殺人事件に発展。過去と現代、妄想と現実の間で精神追い詰められていくという話。

そんな面白いに違いない『ラストナイト・イン・ソーホー』を観ましたオレは。

特定の「60年代」という時代をテーマにしたサイコで、予測のつかないミステリーホラー。

得意のジャンル映画をスタイリッシュに表現したエドガー・ライトらしい傑作になっていて、本当に良く出来ていて唸りました。

「60年代」ってゆーことで、その時代のスリラー映画を意識したストーリーであり、ビジュアルの構築が目を見張る出来。

ロマン・ポランスキーやらダリオ・アルジェントやらヒッチコックやらを思わせて、そうなるとついでにデ・パルマもだよねって連想しちゃうので、そんな感じで勝手に彷彿とさせてくれるわけでして、その手の作家性への上品なリスペクトがエドガー・ライトの個性で断然きらめき、惹きつけられる魅力放つわけです。

都会での孤独や心細さから精神病んでいく女の偏執症サイコスリラーの趣を踏襲しつつ、「60年代」の表面的な成功の匂いやキラキラした華やかさを雰囲気として作り上げながら、その影で悪意をむき出しにする顔無き男たちによる女性搾取や性暴力を告発するフェミニズムな社会派視点とドンドカと襲い掛かってくる急転オカルト展開、時代を超越した殺人ミステリーにはひとひねりまで加えての申し分のない面白さが約束された上等エンタメ。

旬の売れっ子若手とかちゃっかり起用するという抜かりの無さで、女優のチョイスも相変わらず良すぎる。

ゴージャスで、スターのオーラ放つアニャ・テイラー=ジョイとチャーミングで、抜群な演技力のトーマシン・マッケンジーという二大主演があまりにも見応えしかない。

特にトーマシン・マッケンジーが全力でずっと可愛いし、後半にかけて精神がますます危険な状態に陥っていく様も迫力満点で、この前たまたま観ちゃった似たような境遇の『パーフェクト・ブルー』をどうしても重ねちゃったりするのだw

立派な出ずっぱり主演をトーマシン・マッケンジーは成し遂げ、キャリアで最も映えてるのが『ラストナイト・イン・ソーホー』になったに違いない。

つまり、もう色々と全部面白いんですねこの映画はw

マジでエドガー・ライトってもはや監督として安心感しかないし、成長もしてるしで、何を作っても絶対に間違わない確実さがある。

心配ご無用。

刺激的すぎるソーホーの夜は頭正常じゃいられなくなるということで、神経質でシックスセンスな感性が研ぎ澄まされてるヒロインがうっかり体験してしまうのは、華やかなショービジネスの裏側に潜む「60年代」という恐怖の記憶なのだ。

真っ赤なネオンは不吉なサイン。

エドガー・ライトが笑い取るのをだいぶ抑えての結構真面目に、本格的に怖い映画を、いつものように明確で完成されたイメージと構成で作ってる事実に寸分の狂いもないです。

「ちゃんとしているなぁ、エドガー・ライトは」って誰もが思うし、思ってください。

分かったら、『ラストナイト・イン・ソーホー』をとっとと観てください。

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