去年の映画なのでもう関心がそこまでないでしょうけど、傑作すぎてどうしても最初のレビューはこの映画にしたかったのですw
『ゲット・アウト』は、白人の彼女の家に黒人の彼氏が挨拶に行ったら、その家の白人一家にやたらと御もてなしをされてしまって、ぶっちゃけ戸惑うという話ですw
簡単な出だしはそんな感じ。
この映画、2017年ぶっちぎりで気持ち悪くて、観たことを思い出したくない気持ちにさせてくれるトラウマな一本でした。
怖い映画っていろいろありますよね。要は恐怖の対象がオバケだったり、オカルトな呪いだったり、モンスターだったり、シリアルキラーだったりと。
そのどれにも属さないです。
『ゲット・アウト』の怖さはもっと厄介というか、何かが怖いという明確な感覚より「悪い予感」に似ていますね。
観ている間はとにかく不安で仕方ないです。
でもどうなるのかまったく検討もつかない心地悪さで逃げ出したくなります。
文字通り映画館からゲット・アウトしたくなること必至。
監督がなぜかコメディアンというのが興味深いです。
ジョーダン・ピールという人で、オレは全然知らないですw
なにやら才人らしくて、アメリカではコント番組作ったり、コメディ映画に主演して成功してるみたいですよ。
初監督でこの天才的センスとストーリーの発明感。
只者じゃないです。オレは只者だから分かります。。。
怖すぎる上に、本作の「笑い」への執着もフツーじゃないw
そこにジョーダン・ピールさんの類まれな才能を感じられます。
めちゃくちゃに不快でおぞましいホラーなんだけど、凄くウケますw
ホントw
やたらと怖いシーンの直後にやたらと笑えるシーンをあっさりカマしてくるのがロック。
特筆は、主人公の濃すぎるキャラの友達役。
コイツが笑いの全パートを請け負っていて、健気なまでに観客を笑わせようとしていて必死なのがツボでしたw
一瞬、アンソニー・アンダーソンなのかと疑いました。最近、全然見ないですけど、もう引退しんでしょうか?
ぜひともこの友達役の俳優さん(名前知らないw)にはアンソニー・アンダーソンさんの生まれ変わりとして大注目です。
(※アンソニー・アンダーソンさんは健在ですw たぶんw)
ちゃんと怖いのにちゃんと笑えるという映画は、これまでありそうでなかったのではないでしょうか。
死ぬほど怖いのに、平然と過激な笑いをぶち込んでくるあたりの自由な作風が秀逸で、作品の説明のつかない不吉さも相まって世にも奇妙な世界観を作り出してます。
ジョーダン・ピールさんは、オレが思うにインテリです。
『ゲット・アウト』は、観客にトラウマを残す映画的迫力を与えつつ、実際は凄くマジメな映画だと思いました。
確固たるテーマやメッセージが核心にあります。
それなのにそこを気にさせないエンタメ性を誇っていて偉い。
本当に傑作です。結局は知性ばかり感じてしまいました。
怖くて、笑えるということは分かりましたが、この映画が一体何についての話だと問われれば、やはり「人種」だと思いました。
アメリカ社会にとって「人種」という問題はもはや呪いに近くて、この映画もそんな深刻な「人種」という名の呪いを描いています。
といっても、「白人が黒人を一方的に迫害して、黒人が理不尽な目に遭う」みたいな単純で陳腐な構造じゃありません。
もっと洗練されているし、絶妙にさりげなく、どこか滑稽なのです。
最初から最後までいろんな場面で、いろんな台詞とやりとりからアメリカの人種問題の根深さや複雑さを象徴させ、それが後半の地獄絵図にちゃんと活きてくる仕掛けになっていてゾッとしたり、驚愕したり、気絶したりします。
この映画自体が、黒人と白人両方の血を分けるジョーダン・ピールさん流の「人種」に対する本音なんだと受け取れば、悪趣味なのに同時に高尚な社会風刺コメディなんじゃないかなんて評価してみたくもなります。
『ゲット・アウト』はただ怖いんじゃない。
映画としてなんか色々と超越してて、映画的常識を破壊してる作品。
本物のインテリじゃないと作れないよこんな映画は。
凄いよホント。
未見の人はとりあえずレンタルで、すでに見た人はもう一度レンタルで見てもいいし、思い切って購入して友達や家族に自慢してみるのもアリの重要作w